この記事は、心からやりたいこと・好きなことを抑えて、自分に嘘をついて就職したけれども、その生き方に違和感を感じて自分を見つめ直した、とある人間のわずかに過ごした社会人生活の始まりと終わり、そして自分の道を歩んでいく決断をするまでの軌跡を書き記したものです。
前編(この記事)、後編、完結編の全3編となっております。
会社の出会いと、そこに決めた理由
私が新卒で入社したのは、地元を中心に展開する地域密着型のスーパーでした。
私が当時主に使っていたのはリクナビでした。理由は単純に、手書きで履歴書作って描き直しをするのが嫌で、その点OpenESが便利だったからです。
来る日も来る日も、リクナビでどこか気になる企業がないか探していました。
すると、自宅から近くて転居を伴う異動もなくて(=一人暮らしをする必要がないのでお金を貯められる)、給料も額面25万と新卒にしてはそれなりだし、合計90分も休憩があるしで、中々魅力的に思えるものが見つかりました。
これが私と会社の出会いでした。
説明会当日、説明会ついでに時間があるから面接もしてしまおうと思い、面接も希望しました。本当は面接のためだけにまた来るのが面倒で嫌だったからですが。
面接は管理部長と事務の人の二人がお相手でしたが、結局面接らしい面接は最初の数分くらいしかやらなかったと記憶しています。いつの間にやら、具体的な労働契約の話や賃金の話などをしていました。
説明会のときに社長から「ここでとりあえず内定を持って、心の余裕を持って、それで他も色々と見たらいいんじゃないかな」というようなことを言われたので、もしかすると内定前提で話は進んでいたのかもしれません。
あるいは、内定を餌にしておびき寄せて捕らえておくべき格好の獲物と思われていたのかもしれません。
会社説明会の後日、何となく予感はしていましたが、内定通知書が郵送されてきました。
必要書類を送り、みんなと同じように内定承諾すれば就職活動を終わらせられてようやく一安心、といった感じで私は就職先をそこに決めたのでした。
本当のところ、なぜそこに入社を決めたかというと、11月も終わりに差し掛かってもうすぐ12月だというのに未だ内定の一つもなかったことと、苦痛に満ち溢れた就職活動をもうやりたくなくて、すぐにでも終わらせたかったという非常に不純な理由によるものでした。
内定承諾後から入社まで
新年会
年が変わり、1月上旬。会社の新年会に招待されましたので、参加しました。
当然ながら、色んな人が多くいました。年配に見える方、まだ若そうな方…。
これまでの大学生活とは違って、大人たちがいる場に自分がいるということが少し信じられませんでした。
お酒の影響もあってか、その場ではみんな楽しそうに話していた様子でした。
私も成人していた身ですので、多少お酒を嗜み楽しい気分になり、「社会人になったらこんな風に楽しくやっていけるのかな」などという、甘々にもほどがある思いを抱いていました。
一方で、「この楽しげな輪の中に自分は入っていくことはできない」というどこか冷めたような、一歩どころか二歩三歩引いたような感じで、他人事のように新年会の喧騒を眺めていました。
ぶっちゃけ、会社総出の新年会なんかに金を使っちゃってしょうもないなと、そんなことしないでその分の金を給料に回せばいいのにと、今となっては思わずにはいられません。
研修として外部の催し物への参加
月が替わり2月の中旬。新入社員研修の一環として、とある催しに参加しました。同業者や企業の方が大勢いて、様々な食品や飲料、展示などが会場内を埋めていました。
この光景を目にしたとき、コミケに行った時のことを思い出していました。
自分に誇りを持っているかのような、堂々とした感じや、自分のものを一生懸命に売り込んでアピールする姿…。
それぞれの人が、生き生きとして見えました。輝いているように感じました。
仕事をしていれば、こうしたきらきらした人とたくさんのつながりを持てるのかと思うと同時に、私自身も輝く人になれるのだという儚い希望を持ったのでした。
新入社員研修
大学卒業を目前に控えた3月中旬、新入社員研修ということで本部事務所へ。
スーパー部門だけではなく、系列の別の部門に入社する新入社員も集まりました。
やったことといえば、挨拶の声出し、お辞儀の練習、レジ打ち、マニュアルに沿った対応の練習でした。全体的な研修のみで、個別に配属される部門の研修は全くありませんでした。
おまけに研修を行ったのは、その日一日だけでした。
泊りがけで研修というのもきついものがありますが、これはこれでしっかり教育する気があるのかと、私は少し疑わしい気持ちになりました。
配属先決定と挨拶回り、そして新入社員歓迎会
入社日目前の3月下旬。配属先が辞令として言い渡された後、実際に配属先へ挨拶へ行きました。
私は事前に精肉課への配属を希望していまして、実際に言い渡された配属先も精肉課でした。勤務地は、地元からやや離れて埼玉県内の店舗へ配属となりました。
当然ながら誰が店長か分からなかったので、適当に店員を見繕って話しかけ、案内してもらいました。
店長と顔を合わせて挨拶した後は、各部署への挨拶回りと、これから働く精肉課のチーフと今後の話をしつつ、少し見学といった流れでした。
程よい時間になったところで、同日に開催される新入社員歓迎会に参加するべく、店舗を後にしました。
夕刻の都内某所にて、新入社員歓迎会はささやかな規模で行われました。そこで私は酒によって気持ちよくなっていたのでした。
新年会より規模が大幅に小さい分、他社との距離が近かったからか、自分がそこにいるということを強く感じました。
同期と楽しく話せて、仕事もこんな感じで楽しくやっていくのかなと、のんきなことを考えていました。
遂に迎えた、4月1日。
正式入社となる日。
配属先で仕事を始める日。
新社会人となる日。
そしてここから、一瞬の煌めきにも似た、太く短い半年間の社会人生活が幕を開けたのでした…。
後編に続きます。