あれだけ鳴いていたセミたちも、気が付けばいなくなっていく。道の上でひっくり返って、足をちぢこめてピクリともしない。彼らは子孫を残すという本懐を遂げられたのだろうか。
草っぱらの横を通る道で、バッタが潰れている。人間が歩いているときに潰したのか何なのかは知らない。羽がクシャクシャになり、足はちぎれ、腹はペッタンコになっている。
アスファルトの道の上で、ミミズが干からびて死んでいる。あるいはこっちもペッタンコに潰れている。大きくて太いミミズも、並サイズのミミズも、等しくその命を散らしている。
夏は命が多くなり、そして季節が移ろう頃になるとその命は消えていく。夏の生き物、特に虫が死んでいる様を見ると、何となく夏の哀しさを感じる。
今年も夏が終わり、秋がやってくる。季節の境目に見かけるセミたちの死骸に、ほんの少し夏がまだそこに残っている気がした。そんな夏の残骸たちをよそに、私は次の季節を生きる。