———ゴブリンは皆殺しだ。
どうも皆さま。ヒトヒラです。
今回感想を書くアニメは、「ゴブリンスレイヤー」という作品です。
偉大な英雄などとは決して呼べない、地味で泥臭くて暴力的で、ややもすれば狂気的で残酷な世界を生きる者。だけれども、ひたむきに己の過去や運命に抗い、そして生きる者。そんな冒険者たちが集うファンタジーの世界へと、あなたも入り込んでみませんか?
※感想はあくまでも私個人の感想となります。また、記事の性質上、作品のネタバレをしてしまう箇所もあります。ご了承ください。
作品紹介
「ゴブリンスレイヤー」は、蝸牛くも氏原作のオンライン小説およびライトノベルです。元々はWEB作品でしたが、AA*1と組み合わされてできたものですので、純粋な小説とは異なっています。
詳しい説明は、Wikipediaなどをご参照ください➡ゴブリンスレイヤー - Wikipedia
あらすじ
「俺は世界を救わない。ゴブリンを殺すだけだ」
辺境のギルドには、ゴブリン討伐だけで
銀等級(序列三位)にまで
上り詰めた稀有な存在がいるという……。
冒険者になって、はじめて組んだ
パーティがピンチとなった女神官。
それを助けた者こそ、
ゴブリンスレイヤーと呼ばれる男だった。
彼は手段を選ばず、手間を惜しまず
ゴブリンだけを退治していく。
そんな彼に振り回される女神官、
感謝する受付嬢、彼を待つ幼馴染の牛飼娘。
そんな、彼の噂を聞き、
森人(エルフ)の少女が依頼に現れた――。
引用元:ストーリー | TVアニメ「ゴブリンスレイヤー」公式サイト
キャラクター紹介
いずれも公式サイト(キャラクター | TVアニメ「ゴブリンスレイヤー」公式サイト)から、
一部キャラクターを引用してご紹介します。
・ゴブリンスレイヤー
ゴブリン退治のみを請け負う冒険者。
・女神官
15歳。地母神の神殿を出て冒険者となったばかり。
・牛飼娘
ゴブリンスレイヤーの幼なじみ。同じ牧場に住んでいる。
・妖精弓手
上森人(ハイエルフ)で弓の使い手。ゴブリンスレイヤーと冒険を共にする。
・鉱人道士
鉱人の術士。妖精弓手と同じパーティだが、口論が絶えない。
・蜥蜴僧侶
蜥蜴人の僧侶。妖精弓手と鉱人道士の仲裁役。
感想
ゴブリンもこの世界も甘くない
第一話では、女神官を含んだ、冒険者になりたてのとある新米パーティーが、ゴブリン退治の依頼を受けて棲み処の洞穴へと乗り込んでいくのでした。
しかし、彼らはゴブリンに対する知識があまりにもなかった上に、「村に来たゴブリンを一度退治したことあるから」と自信過剰になっていて、ゴブリンを完全に舐めていました。加えて、洞穴でゴブリンと戦うには相応しくない装備*2をしていた有様でした。結果、メンバーたちはゴブリンの策略にあっさりとはまり、ゴブリンに囲まれて惨たらしく殺されたり、生きたまま凌辱されていったのでした。
そうして、女神官が属するパーティは壊滅。目の前で仲間が殺されたり犯されりしていく凄惨な光景や、自身もそうしてゴブリンの餌食となることに対し、恐怖と絶望を覚え失禁しているところを、ゴブリンスレイヤーに助けられたのでした。
———奴らはバカだが間抜けではない。
主人公、ゴブリンスレイヤーの言葉です。
作中でもゴブリンたちは、毒を用いたり、待ち伏せをしたり、犬(のような生き物)を飼いならしたり、水路では船に乗っていたりなど、若干ながら知性や学習性を持ち合わせていることが描写されています。加えて、生きた女性を痛めつけたり、性的にもてあそんだり、時には肉壁として扱うといった邪悪さ・醜さも持ち合わせています。
また、ゴブリンには「シャーマン」「ロード」といった、統率に長けた上位種も存在しています。司令塔がいる場合、いかにバカであっても統率された動きをゴブリンは見せてくるのです。ゴブリンの一匹一匹はそこまで脅威になりませんが、それが何十、何百となると、数で押されて圧倒的に不利になってしまいます。ゴブリンの脅威というのは、何と言っても数なのです。
それだけではなく、「ホブ」「チャンピオン」といった、普通のゴブリンと比べて格段の強さを持った上位種も存在しています。実際アニメで出てきたのは、体格が大柄で力が非常に強い個体ばかりですし、普通のゴブリンを盾にして自身への攻撃をしのぐといったように、より小賢しくなっている一面もあります。当然、その巨体と力から繰り出される一撃は非常に重く、一回攻撃を食らうだけで致命傷になるレベルです。*3これらが一匹いるかいないかで、ゴブリンの群れの脅威度が全く異なってきます。
総じて「たかがゴブリン」と侮って、戦略や対処法を練らなければ、確実に死へと進むことになります。
これは余談ですが、「灰と幻想のグリムガル」*4という、「ゴブリンスレイヤー」と全然関係ない別の作品でも、主人公パーティがゴブリンに大変苦戦していました。
「ゴブリン」というと、「ファンタジーやRPGなどでよく出てくる、最序盤で相手にする雑魚敵」という認識がありませんか? 私はそう思います。そういうゲームでは、キャラが強くなったら平気でバッタバッタなぎ倒せるので、特に印象に残らない存在になりますよね。もしかすると、ゴブリンに対するそうしたイメージを逆手にとったりメタったりということで、意外性の創出ということを目指したのかもしれませんね。
あるいは、いくらファンタジーの世界といえども、誰もがゴブリンに簡単に勝てるわけではないということ、不死身で最強の勇者なんてそう何人も存在しないということ、死んだらそれでおしまいで復活なんてないということを、厳しくて残酷な描写を通して表現しているのでしょう。後述しますが、これは「ゴブリンスレイヤー」という作品が「TRPG」を基にしてできていることと、大いに関係しています。
世界は救わないが、ゴブリンは殺す。
作中では、魔神王なる存在が復活し、それによって魔のものたちが世に蔓延り始めたことで、世界の平和が脅かされていました。それらの存在を倒し、世界を平和にするべく戦う冒険者もいました。*5
一方ゴブリンスレイヤーはというと、世界の危機になど興味を示すこともなく、今日も今日とて相変わらずゴブリン退治に勤しむのでした。
彼にとってゴブリンとは、彼の世界から、日常から、生活から、大事なものを奪っていった存在です。彼の中では、ゴブリンが存在していることのほうがよっぽど危機なのです。
———世界が滅びる前に、ゴブリンは村を滅ぼす。世界の危機はゴブリンを見逃す理由にならん。
イメージとしては
世界の危機<<<<<<<<<<<<<<<<<ゴブリンの脅威
といったところでしょうか。
ゴブリンは村を襲って人を殺したり、女性や家畜、財産などを奪い取って我が物にする、いわゆる略奪民族のような存在です。そんな恐ろしいものが自分の身近にうじゃうじゃ潜んでいると考えてみたら、まず第一は自分の身や生活の安全を考えるでしょう。そうなると世界の平和どころではなくなりますし、そんなものはどうでもよくなります。
現実で考えてみましょう。
あなたがどんなに争いがない平和な世界を望んだところで、あなたが強盗に殺されて死ねば全てが無意味です。自分の住んでいる場所の近くに強盗が潜んでいると知ったら、その状況の中でも、あなたは争いがない平和な世界のことを考えられますか?
恐らく無理だと思います。そうなったときに考えられるのは、自分の身の心配くらいなものでしょう。
自分の身近な脅威や危険がなくなって、初めて心に余裕ができます。世界の危機も、そうなったときに初めてしっかりと考えられるのです。
———僕たちが世界を救ったって、村が滅んじゃったら嫌だもんね。
魔神王の軍勢を討伐した、白金等級の勇者の言葉です。
たとえ世界そのものが救えたところで、そこに住んでいる人々が滅んでしまっては、世界を守る意味も無いというものです。
ゴブリンスレイヤーというのは、言わば「ゴブリン」という人々の生活を脅かす存在を殺すことで、小さな「世界」を救っているのです。
神々に「運命のダイス」を振らせない
「ゴブリンスレイヤー」という作品は、TRPGの影響を大いに受けたものとなっています。アニメのOPやアニメ本編で描かれるサイコロ(ダイス)というのは、TRPGを意識した演出ということになります。
「TRPGって何?」という方もいるかと思いますので、簡単に説明します。
TRPGとは、一言で表すなら、電源を用いないで、リアルの卓上で行って遊ぶロールプレイングゲームです。テーブルトークアールピージー(Tabletalk RPG)の頭文字をとって、そう呼ばれています。ちなみに「TRPG」は和製英語です。
参加者は、ゲームの司会進行役となる「ゲームマスター」(GM。あるいはキーパー(KP)とも)と、ゲームでキャラを操作して探索をする「プレイヤー」(PL)とに分かれて、ある一つのシナリオを遊んでいきます(これを「セッション」と呼ぶ)。
ところで、作中には緑の月と赤い月と、二つの月が見られました。この描写も、TRPGの世界が元となっていることを如実に表すものだと私は感じました。*6
プレイヤーは、セッションに参加するためにキャラクターを創造します。キャラメイクの際、性別・年齢・種族・特技・持ち物やその他の設定を色々と練ります。丹精込めて、自分が操作したい、好きなキャラクターを生み出していきます。
そうして、自分のキャラクターを作り上げ、TRPGのシナリオの世界へと送り込むわけです。
なお、シナリオ中でキャラクターの体力が尽きて死亡した場合は、余程特別なことがない限り、復活はあり得ません。死んだら全てが失われます(これを「キャラロスト」と呼ぶ)。
基本的には話し合いで進みますが、セッションで何かランダムなことを発生させる場合などには、サイコロ(ダイス)が振られます(TRPGの世界では、そのことを「ダイスを振る」と表現する)。例えば、敵が攻撃してきたのをよけることができるかとか、図書館で目当ての本をすぐに探し当てられるか、などです。
他のプレイヤーと互いに協力しつつ、時にダイスに運命を委ねる。
そうして、シナリオのクリアを目指していくのです。
作中のゴブリンスレイヤーの行動や戦法というのは、見ているとダイスを「振らない」(あるいは「振らせない」)ようなものや、使うべきものを本来想定される用途で使っていないといった描写があります。
例えば、女神官の「プロテクション」で逃げ道を塞いで、ゴブリンたちを煙や炎に包み込んで殺したり、転移(ゲート)のスクロールを海底に繋げ、その水圧でオーガの体を切り裂いて倒したり、といったものがあります。
本来の「プロテクション」は、敵の攻撃から身を守るためのバリアとして運用されるものと考えるのが、一般的な発想でしょう。また、転移のスクロールについては、緊急時の脱出用に使おうと考えるのが妥当なところです。
そんな意外な発想をする人間なんて、そう多くはいないと思われます。
つまり、TRPGの世界で考えると、ゴブリンスレイヤーはハチャメチャな発想をけしかけてくるわ、どうしてもダイスを振ろうとしないし振らせようともしない、GM泣かせなPLというわけです。
メタ的な視点で考えるとそうなりますが、作中の世界で考えてみると、
「己の運命は自分の力で切り開いてゆけ。天になど委ねるな」
という、生きていく上で大事なこと、大事な信念、大事な情熱を、見ている私たちに教えてくれるようです。
外部リンクなど
アニメ公式サイト
これを書いていたら(2020年2月6日現在)、ちょうど映画も公開されました。
アニメだけでなく、劇場版の情報なども掲載されていますので、気になりましたらチェックしましょう。
ガンガンOnline
オンラインでマンガが読めます。
「アニメもいいけど、マンガも読みたい!」「手元に残すのはいいや」「一度読めばそれで満足」という方はこちら。
こちらは公式的なサイトではなく、ニコニコ動画に投稿されたとある動画です。
考察による補足(ただし投稿者ご本人曰く、「考察動画の類ではない」とのこと。)でゴブリンスレイヤーの世界をより深く知れたり、理解を助けてくれるような、中々良質な動画です。この方の動画時間は5分程度と手短になっていますので、気軽に見ることもできます。
ぜひご覧いただきたかったので、ご紹介いたしました。ただし、最終話に関する動画については投稿されず終いとなっていますが…。
ではでは、ここで露骨な宣伝タイムです。
「原作を手元に残したい!」「紙媒体で読まないと気が済まない!」という方はこちら。
電子書籍か紙媒体のどちらを選ぶかは、あなたの生活スタイルなどと相談するとよいでしょう。
しかしあえて言うなら、私としては、やはり手で紙に触れて読むほうがお勧めです。人間は五感を活用したほうが、何かと記憶に残る生き物ですから。
外伝もあります。なお、私はその存在を知りませんでした。
ここでの紹介はこの作品だけにとどめておきますが、他にもあるようです。ご興味があれば、ご自身で探してみるとよいでしょう。
お次はアニメです。
「手元に残して好きな時にアニメを見たい!」「コレクトして取っておきたい!」という方であれば、円盤をご購入なさるのもよいでしょう。
ただし、円盤のほうはコレクトするとなると、一枚一枚のお値段がお高めゆえ、かなりの出費を要することとなります。本編を見るだけで十分ということでしたら、ネットの動画配信サービスからの視聴をお勧めいたします。
アニメを見たいのであれば、Amazon Primeに登録するとよろしいでしょう。
登録すれば、アニメだけでなく映画もTV番組も見放題、200万の音楽が聴き放題、その上お買い物のお急ぎ便や日時指定便が使い放題です。
なお、登録後30日間はお試し登録期間ということで、料金は無料です。
その後、登録を続ける場合は、月額500円(税込み)の料金が必要となります。
他にも探せば、動画配信サービスはあります。
ご自身でお探しになった上で比較検討して、ご自身の利用目的と合致したところへご登録くださいませ。
当記事は以上となります。最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。
*1:アスキーアートの略。
*2:メンバーの一人であった新米剣士は、洞穴で振るには長すぎる剣を武器としていた。実際、ゴブリンに剣を振り下ろそうとしたら天井に当たってしまい、その隙に複数のゴブリンに一斉に取りつかれ、抵抗も何もできないまま殺されていった。
*3:作中のでは、ゴブリンスレイヤーがホブゴブリンに思い切り薙ぎ払われ壁に叩きつけられただけで、かなりの深手を負わされていた。
*4:ざっくり紹介すると、主人公たちは記憶も何もない中で目覚め、「グリムガル」と呼ばれるファンタジーな世界で生きることを迫られる、といった作品。
*5:アニメでは、白金等級(最高ランクの冒険者。この等級に認定されるのは、まさしく世界を救えるほどの英雄的・人外的な強さを持つ者に限られる。)の冒険者とその一行が、魔神王の手先と対峙して倒すという場面があった。
*6:”Green Moon”=GM、"Pink Luna"=PL、ということなのだろう。